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Vol. 63

設計教室2021 第2回 報告

2021.07.01 カテゴリ: タグ:

2021年第2回をオンラインで開催。

6月9日・10日に、第2回目を開催いたしました。今回も伊礼智設計室からライブ配信での実施です。


そして今回のゲスト講師・審査員として、関本 竜太さん にお越しいただきました。

関本 竜太 氏/一級建築士事務所リオタデザイン:https://www.riotadesign.com/
 

1日目の講義では伊礼さんが「心地よさのものさし2」と題して、3つの新築の作例(くらしこの家・くらしこ家ハナレ@岐阜/諫早の家@長崎/つむぐの家@松本/魚沼の家@新潟)について、プランニングの手順や設計ポイント、様々なエピソードや考察をお話されました。

「くらしこの家・くらしこの家ハナレ」は、母屋をつくった3年後にハナレを作った作例。子育て世代のご家族が住まう母屋は二階建て。駐車スペースが多く必要な時に使う、母屋に直交するような下屋を駐車スペースとし、街と家をちょうどいい距離感で繋げるパターンや、建築家林雅子さんの言葉を引用しながらの空間をつなぐ吹抜けのルール、建具を開く閉じことで調整する立体的なワンルーム空間のつくり方などを披露。くらしこの家ハナレでは、お庭を設計する方に軸足を置いたという暮らしこの家ハナレは、ご両親が住まう1Fで暮らしが完結できる平屋ベースの住まい。中庭を共有しながら母屋と繋がるよう計画され、ハナレのハナレがあったり、屋上にもお庭があったりと、様々なお庭を愉しむことができる。母屋とハナレがある建築群だが、通りから見たファサードが1棟に見えるよう工夫されているのもポント。意匠や使い勝手だけでなく、耐震性や耐久性、断熱気密性能にも気を配られているのが印象的で、それらを支える数々の標準的な納まりや長く使い続ける素材なども紹介されました。

敷地選びから関わられた「諫早の家」では、三間×五間のスタンダードを考えられたといいます。ワンルームの中に居場所が散りばめられたリビング、回れる動線、照明の考え方、景色の採り入れ方など、心地よさのスタンダードが組み合わされている様子がわかりました。

「つむぐいえ」は、冬場はマイナス10度にもなる環境にあり、高気密高断熱に取り組んだ初期の頃の作品。気密断熱性を高めるだけでなく、日射遮蔽にも気を配り、大きな落葉樹や、ガラリ、外付け部材を取り付けて調整ができるように工夫されています。また、アルプスを望む景色や、映画のワンシーンのような景色など、まわりの環境を素直に取り込む技や、無駄な廊下を無くす方法なども参考になる事例でした。

また最後に、リノベーションの事例も披露されました。今年で築61年になる伊礼智設計室のリノベーション事例と、吉村順三さん設計の箱根山マンションリノベーション事例です。元々の建物の持つ魅力や設計者の想い、使い手への配慮を踏まえて、何を残し、何を更新するのかの考え方は大変参考になるものでした。

関本さんは、アトリエからのオンライン講義となり、3月に発行された著書「伝わる図面の描きかた」にちなみ、「伝わる住宅のつくり方」と題して、仕事や設計でいつも心がけていることをお話いただきました。

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1)違和感を大切にする 
2)自分の基準を誰よりも高く 
3)1を聞いて10を知る 
4)手段と目的は分けて考える
5)大切なことはストーリーで判断する
番外編として、
1.緊張と緩和
2.フリとオチ
などを、お笑いとプレゼンに必要な三大要素として紹介
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約20坪の「街角に立つ家」や「宇都宮の家」について、お笑いから学ぶフリとオチ、ボケとツッコミになぞらえながら
お客様とのやり取りやプロセスを紹介。伝わらなければその計画は実現しません。先を行く細かな予測で信頼を得て強固な関係性を築くこと、想いを込めること、ひとつひとつの線にもメリハリを持たせること、などをテンポよく披露され、起承転結のある「伝わる講義」でした。

その後のオンライン懇親会では、関本さんの描かれる図面のボリュームや断熱・気密性能の考え方、また関本さんが使われる文房具についても質問が及び、みなさま細部にわたり学ばれているようでした。


2日目は上級編の即日設計です。今回は鎌倉にある敷地を課題とし、3時間で設計しました。

建て主さんは都内マンションからの移住。敷地は坂を登る途中にあり、南東にお寺の竹林を望む緑豊かな場所で、ご要望を踏まえた上で敷地環境を読み込んだ鎌倉らしい佇まいの提案が求められました。

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ゲスト審査員の関本 竜太さんには伊礼智設計室にお越しいただき、伊礼さん関本さんからそれぞれ、参加者のプレゼンテーションについての考察やコメント、具体的なアドバイスが寄せられました。土に近い暮らしを提案すべくリLDKを1Fにする案と、お寺の竹林を暮らしに採り入れるべくLDKを2Fにする案とで分かれた今回の即日設計でしたが、第一回よりもプランニング力やプレゼンテーション力が格段に向上していたことが印象的でした。関本さんからは「みなさんこれを2~3時間でつくったということに舌を巻いた」と驚きのコメントが。みなさん、ストーリー性をかなり意識されており、「フリとオチ」「天丼」など、関本さんの講義で学んだポイントも即実践されていました。

審査はこれまでになく難航しましたが、検討を重ねた結果、「独創性の高さ」で6作品に審査員票が入りました。中でも「一番心を動かされた、意表を突かれた」アトリエウィの宇佐美 愛さんが、審査員から3票と参加者票1位を獲得し、今回も最優秀に選ばれました。宇佐美さんおめでとうございます!

終了後のオンライン懇親会では、「3時間の持ち時間の中での作業の時間配分について」や「プランニングをする中で大切にしていること」などで盛り上がり、さらに知見を深める会となりました。

 

2021年 第2回 投票結果

宇佐美 愛さん4票

松本 孝充さん

3票

高森 喜洋さん

2票

杼木 美奈子さん

2票

石貫 希生さん

1票

金澤 智枝さん

1票

伊礼 智さん作例

 

関本 竜太さん作例

模型もお見せいただきました。(関本さんも手書き図面をご用意いただいたのですが、計画中であるため掲載は割愛させていただきます)
第2回最優秀

宇佐美 愛さんの作品

設計教室 第2回おつかれさまでした。ご参加いただきありがとうございました!



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