設計教室2022 第1クール第1回 報告
2022.04.12 カテゴリ:設計セミナー, 設計教室 タグ:
2022年 設計教室第1クール第1回をオンラインで開催。
4月6日、7日に、第1クール第1回を開催しました。事務局の事務所に伊礼さんと石川さんにお集まりいただいてのライブ配信となりました。
ゲスト講師は石川素樹さんです。
<1日目>
前半、伊礼さんの講義は2本立てです。1本目は「見えないものをデザインする」。奥村昭雄さんや丸谷博男さんから学ばれ、伊礼さんが今に活かされている考え方や、これまで実践されてきたことをお話しくださいました。
◎奥村昭雄さんから学んだこと→伊礼さんが実践されていること
1.見えるものだけが建築ではない。見えないものまでデザインする。
2.建築を科学する。物事を科学的に考える。
→→温熱環境をデザインする。土地に合った暮らしを考える。
3.足るを知る。欲張ってはいけない。
→パッシヴデザインの奥義ではないかと思う。近所に迷惑を掛けない。北隣家にも日が当たるようにしてあげる。
4.トライアルの先に目安・法則を見つける
→設計を標準化する。
◎吉井町の家(1995年)で考えたこと(丸谷博男さんの言葉)
終の棲家を考える
1.最小動線・最大効果
2.玄関のための玄関はいらない
3.老後には安価なランニングコストが一番
4.工事期間中に婦人が倒れる(→介護のことをより深く考えた住宅となった)
5.塀をつくらないことが、人や地域との出合いを生む
◎吉井町の家(1995年)での設計の工夫(伊礼さん)
・車椅子対応の住まいとする
・体に優しい仕上げとする
・自然エネルギーを利用し少ないエネルギーで全館暖房を行う
・建具など操作しやすい納まり
・「年寄りの住まいだけとちょっとしゃれた感じにしてね」に答える
以上を踏まえ、伊礼さんがこれまで実践されてきたパッシブ住宅への取り組みやそれぞれの住宅ごとの温熱環境と暮らしの設計についてご紹介いただきました。「写真に写らなくても現場では感じることができる。写真よりも実物がいいねと言われる仕事をしたい。」という言葉で1本目が締めくくられました。
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2本目の「町と家のあいだをデザインする」では伊礼さんの故郷である沖縄のまち並みや家から、町と住宅のあり方への考えをお話しくださいました。
沖縄のまち並みや家の特徴は「やわらかな境界・ゆるやかな繋がり」。沖縄特有の建築様式や空間を挙げられました。
◎ヒンプン:町と家のあいだの緩やかな境界
◎アマハジ:家の外部と内部のあいだの緩やかな境界
◎ウタキ:神様がいるとされる、この世とあの世のあいだの空間。町に点在している
◎トートーメー:先祖を祀った空間で、必ず一家に一つある空間。
「あいだの空間」が豊かな沖縄の町並みを原風景として、町と家、庭と家の関係を考えてつくられた数々の住まいをご紹介くださいました。
最後は座右の銘にしているという、哲学者・野矢茂樹さんの「設計ってどれだけ外部を取り入れるかでしょ!」という言葉が伊礼さんから受講者の皆さんへ伝えられました。
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後半の石川さんの講義は「建築で考えていること-近作を通して-」。住宅、非住宅、プロダクト、インテリアと、さまざまな分野で活躍されている石川さん。そのどれを考える時にも実践されている以下1~4の考え方を踏まえ、実作を例にお話しくださいました。
1.必要な要素を抽出する
敷地条件、要望、構造、法規など、すべての要素を好き嫌いなく、優劣なく並べる。
2.抽出された要素を整理する
細かい部分も、重要度に関わらず分類する。
3.整理された要素を細かく分解する
分解していくと、いつも重きを置いていることとそうでないことが浮彫りになる。
できる限り細かく分解し、検討できていないところを抽出する。
4.細かく分けた要素を比較・検討する
より良い方の要素を残し、再び1に戻る。
最初に挙げた要素に足りていないものに気づいた場合は、その要素を1の段階に戻し再度検討する。
1~4の繰り返しでできるのが建築である。
誰でも無意識に行なっていることだが、それを確実に・徹底的にやると意識すること。
『西参道テラス』では、住宅が4棟ならんでいるようなプランとすることで「戸建て住宅のような賃貸住宅とすることができる(戸建てを求める人のニーズがあるエリアだったため)」、「避難経路などを削減し敷地を有効活用することができる」、「住宅として成立させるにあたって欲しかった庭を、中庭としてつくることができる」といった要素を解決。
豪雪地帯という厳しい環境に耐えうる建築をつくる必要がありながらもコストの削減を求められた『十文字町の家』では、「早く、安く、うまく」できるよう、また、その後のメンテナンスがしやすくなるよう材料の組み方や職人の手間まで考えて計画されました。
また、建材などの製品をご自身でメーカーと共同開発され、『中町の家』、『森下の家』は、一棟丸ごとがほぼその製品によって建築されました。開発にあたり改めてモジュールから考え直し、150mmをベースとしたグリッドにて計画されました。
講義の最後は「結局、どこまで理屈を重ねても最終的な決断は感覚で行なうもの。その裏付けのために、細かい分析の積み重ねが必要」との言葉で結ばれました。
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<2日目>
2日目は即日設計(初級編)です。東京都小金井市を敷地とし、「町角に建つ、学者夫婦の住まい」をテーマに3時間で設計し、伊礼さんと石川さんが審査員となり講評を行いました。
町角の家はどうあるべきか?一人の時間を大切にする学者の住まいのあり方、ご近所との関係など、時間内にまとめることに皆さん苦心されているようでした。
講評の時間には、角地における駐車計画と緑の計画、窓からの眺めはどうなるかなどについて先生方からアドバイスがありました。
プレゼンテーションの結果、審査員から各2票ずつを獲得した正栄産業の水林さんの作品「町なかで森をみる」が今回の最優秀賞に決定しました。水林さんおめでとうございます!
2022年 第1クール第1回 投票結果
水林 黎さん | 4票 | 井口 恵子さん | 3票 |
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中村 真さん | 2票 | 伴 栄樹さん | 2票 |
水野 良太さん | 2票 | 木倉 康智さん | 1票 |
伊礼 智さん作例
石川 素樹さん作例
水林 黎さんの作品
第2回は5月開催です!