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Vol. 65

設計教室2021 後期 報告

2021.12.06 カテゴリ:,  タグ:

2021年 設計教室基本編後期をオンライン&オフラインのハイブリッドで開催。

住宅デザイン学校10周年記念書籍発行の取材を兼ねて、設計教室基本編を3回にわたって開催しました。 

今回は一般枠での申し込みも受付けたため、初参加の方にも多くご参加いただきました。

ゲスト講師として、八島正年さん、小谷和也さん、荻野寿也さん、佐藤重徳さん、飯塚豊さん にお越しいただきました。

八島正年 氏/八島建築設計事務所:http://yashima-arch.com/
小谷和也 氏/マスタープラン一級建築士事務所:https://reno.mpl.co.jp/
荻野寿也 氏/荻野景観設計:http://www.o-g-m.co.jp/
佐藤重徳 氏/佐藤重徳建築設計事務所:http://www2.odn.ne.jp/sato-sigenori/
飯塚豊 氏/アイプラスアイ設計事務所:https://iplusi.info/
 

<1日目>

コロナ禍の中、オンラインでの配信のみとなった第1回。

後期最初の講義は、伊礼智さんから。講演テーマは「見えないものをデザインする」。奥村昭雄さん、丸谷博男さんから学んだことやご自身の事例を通して、それぞれの住宅ごとにどのように環境と暮らしの豊かさを考えてこられたこられたかをお話しくださいました。

奥村さんから学んだこと→伊礼さんが実践されていること
◎見えるものだけが建築ではない。見えないものまでデザインする。(見えないものまで考えられた建築がいい建築。)
建築を科学する。物事を科学的に考える。
→温熱環境をデザインする。土地に合った暮らしを考える。(それぞれの住宅ごとの温熱環境と暮らしの設計の紹介)
足るを知る。欲張ってはいけない。→近所に迷惑を掛けない。北側の人にも日が当たる様にしてあげることがパッシヴデザインの奥義。
トライアルの先に目安・法則を見つける→設計を標準化する。
「写真に写らなくても現場では感じることができる。写真よりも実物がいいねと言われる仕事をしたい。」という言葉で締めくくられました。

続いて八島正年さん。講演テーマは「デザインのプロセス」。八島さんが設計する際に日頃考えていることを中心に、これまでの施工事例を交えてお話しくださいました。

身体スケールを考える(「ファンタジアの家」(保育園)、吉村順三建築展)
スケッチも図面の一つ。想いを乗せて伝える。
繊細さよりも空間に重みを持たせるためのディティールの量感を重視する。
「何でもない空間がどれくらいあるか」が住宅の豊かさをつくる。
奥様の夕子さんの素敵なスケッチも多数紹介され、質疑応答の時間にはそのお話で盛り上がりました。
受講者の皆さんからは寸法の誤差が心配でなかなか施主へ提示しにくいという意見が多い中、伊礼さんと八島さんからは「上手い・下手に関係なく、描いた方が伝わる!」とお言葉がありました。


第2回のゲスト講師は小谷和也さんと荻野寿也さん。リアルでの参加者の皆さんは、午前中には荻野景観設計の社屋を見学しました。

午後、前半は小谷さんの講義「マンションリノベの設計手法」。マンションとマンションリノベ―ションの現状を踏まえ、マンションリノベーションにより終の棲家をつくる、ということを軸にプランニングについてお話しくださいました。

マンションを終の棲家にするための必要条件:温熱環境、省エネ性能を向上させること。ライフスタイルの変化に対応できること(可変性の間仕切りや家具による間仕切りなど)。
快適に住まうための設計上の配慮:飽きないデザイン、長寿命な素材。使い勝手と居心地(通風、採光、動線)。全室空調など設備的な配慮。
マンションはモジュールがない。何のための空間なのか、常に原寸で考える。
プランニングの勘所:壁ラインを通す(平面上ですっきりとしたプランニングは住みやすい)。一つの空間に複数の役割を持たせる。動線がただの通り道とならないよう役割を持たせる(回れる動線や廊下兼洗面所など)。立体的、断面的にプランする。
講義の最後には、設計者としての心がけ・クライアントに対しての心がけや設計者としてどう生きるかなど、設計事務所や工務店の設計者である受講者の皆さんに向けてメッセージが送られました。

後半は荻野さんの講義「庭とひびきあう家」。最近はコロナ禍で家に意識を向ける人が多くなり、庭に対する需要も上がってきているとのこと。これまでの様々な事例をもとに、建築と造園、外構の考え方についてお話しくださいました
外で食事するという行為を演出する:デジタルにストレスを感じる生活の中で、安らぎを求め原始に帰っていこうとすると「火を焚く、人が集まる場所をつくる」ということにいきつくのでは。 
庭の使い方を考える:あらかじめテーブルセットや座るところを造り付けてあった方が庭に出やすい。縁側をつくるよりも、大きなデッキを設置しそこで食事ができるようにした方が実際に使える空間になることが多い。また、眺めと音だけを楽しむためにデッキがない方が良いこともある。
外構設計について:建築設計と同時に外構を考える。平面で造園を考えずに現場で図面を描く(隣の電気は何時ごろ点くかなどを把握する)
夕景と照明の考え方:ガラスへ照明が映り込むと反射で庭が見えなくなってしまうため、調光がかけられる器具を。上から照らすと映り込みにくい(下から照らすと地面に置いた器具が見えてしまう、アッパーライトの影は不自然)。夜の庭には月明りの様な蛍光色でも良い
「楽しい話は外構と造園にある。外構・造園を建築設計と一緒に考える方が楽しい打合せになる。」「南向きの開口ももちろん必要だと思うが、植物にとっては北や中庭などの方がしっとりした良い庭になることが多い。庭を眺めるための開口の開け方も持っていてほしい。」と、建築と造園の繋がりの重要性について語られ締めくくられました。
今回は、マンションと庭付き戸建てという対極的な分野を専門とするお二人に講義いただきましたが、質疑応答の時間には「マンションでも緑を感じられる暮らしをつくれないか」と議論が交わされました。


第3回は佐藤重徳さんと飯塚豊さん。お二方とも「間取りから住宅を考えない」ということを掲げ、佐藤さんは骨格を、飯塚さんは型をテーマにお話しくださいました。

佐藤重徳さんの講義「設計が、うまくなりたい」。「府中の住宅」、「葉山の住宅」、「八ヶ岳の家」設計時の経験を通して、骨格から建築を考えることの大切さをお話しくださいました。

外側から考える。社会(経済や環境目標)まで考えたい。
骨格を考える。良い骨格を持っている建物は良い建築。名建築は美しい骨格を持っている。
敷地をまわりの環境の延長として考えることで建築の骨格が見えてくる(府中の住宅)
視点を高くし、外側から観察して骨格を考える(葉山の住宅)
外側を受け入れ、内面(こういう風に住んでみたいという考え)が骨格として表れる。(八ヶ岳の家)。
骨格が見えたら、骨格をもとにアイディアを盛り込む
モジュールは暮らしやすさを重視して決める
講義のまとめとして「住まい手や場所に合う骨格を見つけることが良い建築をつくる外側から考えた骨太な建築をつくりたい。」という佐藤さんの想いが語られました。

後半は飯塚豊さんの講義「住宅設計の正しい手順と方法」。大学で学生さんにも伝えていらっしゃる考え方で「型」をしっかり持つことの大切さ、設計の準備と組み立て方を分かりやすくお話しくださいました。

屋根のかけ方、中間領域の形から考え始める。間取りは最後に考える
 1.構法住宅設計の正しい手順
 2.素材使い
 ◎建物の印象の7割は素材で決まる。
 5.条件整理
 6.屋根の形
 
7.中間領域
 
◎内外の境界部に間合いを取る。
 
8.窓
 
温熱、環境、意匠を両立。立面から考えることで外観を整える。
 
◎多方向に、XYZ軸で考え、際に寄せて取る
 
9.架構
 
10.間取り
 
動線は2階(2階リビングの場合は1階)から考え、「クローバー型」に。
 
◎「抜け」(空間を広く見せる)と「たまり」(落ち着ける場所)をつくる。
以上を踏まえ、「与条件が型となり、型は解法につながる。」とまとめられました。

質疑応答の時間には、会場にて講義を聞いておられた丸山弾さんも登壇されました。伊礼さんからは今回の講義を踏まえて「良い設計が何かわからない場合はまずは型、骨格から考え始めることでやりやすくなると思う。」とお話がありました

今年度の設計教室は終了となりました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。来年度は3月ごろ募集、4月頃開校の予定です。HPなどで随時お知らせしてまいりますので、来年度もどうぞよろしくお願いいたします。



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