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Vol. 81

設計教室2023 第1クール第3回 報告

2023.08.16 カテゴリ:,  タグ:

2023年 設計教室第1クール第3回をオンラインで開催。

7月26日、27日に、第1クール第3回を開催しました。

ゲスト講師は高野保光さんと、小林賢二さんです。事務局に伊礼さんと高野さんと小林さんにお集まりいただいてのライブ配信となりました。 

高野保光 氏 / 遊空間設計室:http://www.u-kuukan.jp/
小林賢二氏 / 小林賢二アトリエ:https://kobayashi-atelier.com/
 

<1日目>

一日目はゲスト講師による講義です。まずは高野さんによる「持ち点0から始めるプランニング」と題した講義。

1.プランの自由度(分割、連結、ズレ)
2.居場所と断面(人・光・風・熱)
3.加点法のプランニング(欠点と魅力)

と3つの視点から、旧小泉邸や自由が丘の家、そして高野さんのこれまでの実作を紹介いただきました。分割プランを作り、連結して、それを少しずらすことで多様性のある豊かな空間ができたり、プランの自由度が増すこと。ラフスケッチ段階で粘土模型を作り触覚的にプランを考えていくこと。1/100・1/50の建築模型を作り、重要箇所はスケッチを起こし、人の動き、光や風の動きを立体的にプランに落とし込んでいくこと。開口部のしつらえ方、お庭や外部との関係性、壁の高さ、柱や家具のデザインなど、複雑な要素が連続しながらまとまり、不要なものを消し、魅力がフォーカスされた、多様性のある豊かな空間が出来上がっていることが感じ取れる内容でした。

「もちろんお施主さんの要望は叶える必要があるけれど、まずその家に自分が住みたいかどうか。ワクワクするかどうかを大事にしています。最初から諦めるのではなく、夢を持って、やりたいことや想いを実現するために前向きに考える。途中で欠点に直面して悲観的になるのだけど、その上で実現できる方法を探し工夫をする。敷地や条件に欠点はある。でも全てをクリアするのではなく、捨てる所は捨てて、その分プラスに転ずる部分が持てれば良いと思う。」と力強い言葉をいただきました。

後半の小林賢二さんからは、「自然の揺らぎと人口の幾何学」と題した講義です。

小林さんは造園家であり、彫刻家としても作品を発表されている方です。自然の造形と人工の造形が組み合わさった風景に関心を持つ小林さんは、人間の暮らす場所としてのバランスを図ることが造園の仕事のひとつ、と話し始められ、「庭の良し悪しは植物だけではありません。造形物の配置やデザインの方が大切であり、建物をつくる方は街の中に立体物をつくる造形力を、屋外のデザインにも発揮してほしい。」と、そのデザインのヒントを、小林さんの仕事を通じてご紹介いただきました。
「まずはしっかりと庭の造形をするところから」「機能を転じて景色に、面白みに」「庭は遊びの空間」「変わっていく植物と変わらない石」「庭には自然素材(木)が似合う」「不等辺三角形を描くように、木も石も配置」「木の位置、大きさを立面でも考える」「高木は落葉樹中心、低木・下草に常緑を多く」「八方美人の木と一方美人の木」「植物のレパートリー」「日陰の庭、北の庭のススメ」「観察して学び、真似る」「空間を埋めるのではなく、空間を創りだす」「立ち上がった草木が、空中の光を集めて見せてくれる」という項目でこれまで積み重ねられた知識や見解を惜しみなく披露いただきました。
平面的にも、立面的にも、また時間軸からも奥行きを持たせた、ストーリー性のあるデザインが特徴的で、建物を含めてその風景を立体的に彫刻するような考え方が印象的でした。参加者にとっても大変参考になったことと思います。

その後のZOOM懇親会では、ゲスト講師のお二人に質問や感想が多く寄せられ、伊礼さんからは補足解説やエピソードも加えてお話いただき、有意義な会となりました。
造形家の一面をお持ちの高野さんと、彫刻家の一面をお持ちの小林さんのデザインメソッドは共通するところがあり、しっくりこない時はずらしてみる、変化するものや自身でコントロールできないものを取り入れると豊かになる、などのお話も面白かったです。

<2日目>

2日目は即日設計(初級編)です。街中の住宅地における「2つの通りに面する住まい」をテーマに3時間で設計し、伊礼さんと高野さんが審査員となり講評を行いました。

課題となった敷地は、南北に接道していることが最大の特徴。また幼稚園と公園が近くにあるという環境下で、ゾーニングや導線をどう計画するかがキーポイントとなりました。また、リビングからキッチンが丸見えにならないこと、週末は友人を招いてのホームパーティーをしたい、プライバシーを確保しながらも外が見れる明るいバスルームが欲しい、などのお施主様の希望条件が加えられ、それらを鑑みた計画がなされました。
様々な案が提出され、北と南のファサードの作り方、単純なプランを昇華させる工夫、平面だけでなく立体から考えたアイディアなど、添削を通じて高野さんや伊礼さんが考えておられる手順や思考が読み取れる時間となったのではないでしょうか。

なお今回の最優秀賞は、審査員票3票と参加者票1票を獲得した、kata.建築工房の片岡悦子さんに決定しました。片岡さんおめでとうございます!

また、今回は第1クールの最後の回ということで全3回を通しての合計得点から総合受賞者の発表も行われました。接戦となりましたが、1回目:5ポイント(最優秀賞)・2回目:2ポイント・3回目3ポイントと得点を積み上げられた、アスカ工務店の中村真さんが、合計10ポイントで総合最優秀賞となりました。おめでとうございます。

これにて設計教室第1クールは終了となります。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
初級編ということで初めて参加された方が多い回でしたが、講師の先生方のお話と、参加者の方のプレゼン・講評がそれぞれ刺激となり、提案力がみるみる昇華されていく様が大変印象的でした。皆様の今後のご活躍を祈念しております!
2023年度後半は、ゲスト講師の方々の実作見学や、設計教室第2クール、そのほか様々なイベントがございますので、お会いできるのを楽しみにしています。

2023年 第1クール第3回 投票結果

片岡 悦子さん4票

中村 真さん

3票

笹川 紗岐さん

2票

佐藤 千里さん

2票

甲斐 靖之さん

2票

小笠原 華奈子さん

1票

青木 史晃さん

1票  

伊礼 智さん作例

 
 

高野 保光 さん ファーストスケッチ

図面の掲載は、未発表作品のため控えさせていただきます。
第3回最優秀

片岡 悦子 さんの作品

  • 2023年 設計教室(初級編) 総合受賞者


    最優秀賞
      • ・中村 真さん(アスカ工務店)10P

    優秀賞
      • ・甲斐 靖之さん(K-space)8P
    •  
      • ・片岡 悦子さん(kata.建築工房)8P
    • 特別賞
        • ・青木 史晃さん(有限会社関元工務店)6P
    佳作
      • ・佐藤 千里さん(S.デザインファクトリー株式会社)5P
      • ・小笠原 華奈子さん(ハウスデザイン株式会社)3P
      • ・笹川 紗岐さん(株式会社エールハウス)2P

    敢闘賞
      • ・鈴木 茂明さん(株式会社ニコハウス設計室)1P
    ・伴 栄樹さん(株式会社伴工務店)1P
    アドブレイン賞
        • ・甲斐 靖之さん(K-space)

 



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